舞台「唐版 風の又三郎」感想

遅くなりましたが…
舞台「唐版 風の又三郎」の公演が終了しましたので、この舞台全体の感想を
書きたいと思います。

あらすじ)
東京の下町で二人の男女が出会う。精神病院から逃げてきた青年「織部」と宇都宮から流れてきたホステスの「エリカ」。二人はこの物語の中では恋人同士ですらなく、ただ、『風の又三郎』のイメージを介して結びつくもろい関係。
汚濁した世間で生きていくことができずに病院に収容され、それでも、自分を連れ去る風の少年に憧れる織部は、その面影をエリカの中に見い出す。エリカは自衛隊の練習機を乗り逃げした恋人を探す道連れとして、この純真な青年を利用する。探し当てた恋人はすでにこの世の人ではなく…。
ガラスのような精神を抱え、傷つきながらもひたすらに、自らの「風」である女を守ろうとする青年と、いまわしい血の記憶に翻弄される女との、恋よりも切ないものがたり。


感想)
私は東京公演・大阪公演合計8回観てきました。
大阪公演は、ソワレ公演は全て観たことになるのかな?

東京で私的初日だった公演を観終わった後は、やっぱりストーリーはよく分かんないな…というのが第一印象でした。でも、ストーリーは分からないけれど、全体的には好きだな~というフワッとした印象でした。
それが大阪公演で回を追うごとに面白さが増していって、最終的にはもっと…ずっと観ていたい!というくらいハマってしまいました。
東京公演を観終わった時点では、WOWOWは加入しなくてもいいかな…と思っていたのに、全公演終わってからは絶対WOWOW加入する!また絶対見たい!に変わっていましたww
まずは、この作品を何度も見たくなる!その理由について書きます。

理由1、噛めば噛むほど味が出てくるストーリー
初めは難解しかなかったストーリーですが、回を追うごとに新しい発見があって、これってこういうことなのか!という驚きがあったり、これってもしかしてこういうことなのかな?と気付きがあったり、昨日はここまでしか掘り下げられなかった部分が翌日はさらに掘り下げられたりする…ということが続きました。
分からないし、掘り下げてもやっぱり繋がらないものもあるのですが、だからこそ理解したくなる…もっと見たくなる、そんな世界観になっていると思います。

理由2、音楽が好き
前作「滝の白糸」より「風の又三郎」の方が私は好きかもしれません。
(いや…そもそも比べるのは間違っていると思いますが)
その好きの大きな要素を占めるのが、曲&歌&ダンス…の部分だと思います。
この作品のテーマ曲でもある“風の又三郎”が一番好きです。
全幕を通して、何度も何度も出てくるので、さらに好きが加速する感じ。
そのテーマ曲と同じくらい好きなのが、織部とエリカが出会った直後にエリカが唄う歌。「春爛漫の花吹雪~」のあたりが非常に好き!
その他にも、エリカが上にまとった服を脱ぎ捨てて、赤のシミーズに着替えた直後のダンス(フラメンコっぽい?)も情熱的で大好きなんですよね~♪

理由3、客席も一体となって楽しめる
まずアドリブが楽しい!これは生の舞台の醍醐味ですよね。
こういう舞台でアドリブってあまりないのかな?と思っていましたが、そんな事全くなかったですねww
特に第3幕の冒頭で、病院の方々が織部…いや窪田君を励ますところを毎回楽しみにしていました(笑)
次に客席いじりがあるww
鶏を飛ばすシーン、ソーセージをプレゼントするシーンは毎回注目ですよね。
大阪公演では、第2幕の冒頭は客席から六平さんが登場しました。
そして通路を使った演出が多い。
通路を縦横無尽にキャストが移動するので、非常に楽しかったです。
客席もみんなこの世界観に浸って楽しめる…そんな演出になっていたと思います。

理由4、窪田君の魅力全開
これは私が窪田君ファンだからということが大いにあると思いますが…ww
窪田君自身もアドリブというか…毎回違った魅せ方をしてくれるので、毎回非常に楽しみにしていました!
第1幕では、エリカと踊るシーンとか、エリカに「お願いがあるんだ」と言われて「女になれと言うんですか?」と女っぽいしぐさをして見せるところとか、風のおじさんとのシーンとか…。
結構織部は端っこで待機して他の出演者の様子を見ている部分も多いのですが、そのときの過ごし方も毎回違います。ただボーっとしてたりとか、舞台上を見つめて静かに待機していたりとか、一緒に踊ってみたりとか…毎回違うので窪田君を見ているだけでも楽しいんですよね。

そして、怪我をした後の公演。
怪我のことは心配でしたが、怪我によって車イスでの演技を見られたということは、貴重な体験をさせてもらったな~と思いました。
通常とはまた違った演出の作品を見たような気持ちにもなって…いつも以上に感動したと思います。

生の舞台と、作品自体の魅力にどんどんハマっていった感じですね~!
すごく濃厚で素敵な時間を過ごせたと思います。


続いて、舞台全体の感想。
舞台が終わった直後は余韻が抜けませんでした…というより、この余韻から抜けたくなかった、が正しいでしょうか。
最近はだいぶ抜けてきて寂しいくらい。
今思うのは、また帰りたいあの世界に、というのが正直なところですww

この作品は、第1幕~第3幕とあって、それぞれ休憩をはさむので、集中力が途切れないかな?と当初は心配していたのですが、むしろ休憩があって、場面も変わるのが色々リセットされて、より楽しめることになったので、この3幕というのはこの作品にぴったりだったんだな~と見終わって思いました。
上演時間も休憩2回はさんで3時間って長いようなんですけど、この作品ではそんなことがありませんでした。
中だるみがないというか、見どころの連続で飽きません!
そのそれぞれの場面設定は…

第1幕
大日本帝国探偵社前。
久し振りに代々木月光町に帰って来た織部。
そこでエリカと出会う。

第2幕
エリカが見た織部の耳の中の世界。
それは夢か幻か。

第3幕
御茶ノ水の陸橋近く。
胸を刺されて病院に運ばれたエリカを探して病院にやってきた織部。
病院で死んだと聞かされて、電話BOXまでやってきた織部は北風を求める。


…という感じ?(…で合ってます?ww)
ストーリーはあってないようなもの。
現実と幻想が入り交じる不思議な世界。
でもよく分からなくても、この世界観はずっと観ていると不思議と馴染んできます。

それぞれ1幕ごとに感想を書こうと思ったのですが、うまくまとまらなかったので、もう場面関係なく、思いつくエピソードをつらつら書きます。
がっつりネタバレしてますので、観ていない方は注意してくださいね!!



1幕ラスト。
「北風は荒々しい風だ!さあこの風に乗って行きなさい…僕の耳の中へ!」
って風向計を耳に刺したまま動きを止める織部。前列で観れたとき、ガン見してたんですが(笑)、窪田君は全く動かないんですよね。まさに微動だにしないとはこのこと。同じ態勢はさすがに疲れるだろうし少しくらい動くんじゃないかと思って見つめてたんですが、ホントに全く動かない。窪田君スゲーっ!て思いました。
一方、車椅子ver.では固まる演出ではなくなったので、ほんわかする窪田君が見られてそれもまた貴重な体験させてもらいました(笑)

照明。
この作品で好きなのが、照明の使い方ですね。
1幕の終わり、照明がさざ波のように幕に当たって幻想世界にいるみたい。
客席後ろまで光が届くサーチライトみたいな照明も好きでしたね~。
あと3幕始めの水が滲んだような照明も幻想的。
電話BOXを縁取るカラフルな光も好き。
とにかく照明にうっとりすること多数…でした!

3幕冒頭。
カタツムリが出てくるのは何の意味があるんだろう?と誰もが疑問に思うことだと思います。(おそらく)
三半規管の蝸牛を示しているんだ!と思い付いて一人納得してたんですが、パンフレットを読んで、美術・衣裳担当の宇野さんの趣味ということが分かって脱力…(苦笑)
ネットとかで調べていると同じように考えられた方多数でした。
そうだよね?そう思うよね!?ww
でも、かなり世界観に馴染んでましたよね(笑)

3幕。
織部が宮沢先生に「死んだ人を生き返らせる方法ってないんですか?」とすがりつくシーン、すごく好きなんですけど、既視感があって何だろう何だろう?とずっと考えてたんですけど、思い出しました。
マンガ「NERVOUS VENUS」(注:未完の少女マンガです)2巻で央司が失恋して神ちゃんにすがりついて泣いてるシーンだ!耳から血を流しているから余計に被ります。

窪田君。
この作品って結構グロいとことかエグいとことか下ネタとかも放り込まれているんですよね。私は下ネタが苦手なので、窪田君にはあまり絡んでほしくないなーと思ってたんですけど、結構スレスレのところで絡んでなかったですよね(笑)
窪田君はこの世界にいながら周りに完全に馴染んでいない、染まっていない、周りを見えない膜に包まれているよう。かと思えば急に狂気に落ちたりするから油断はできないんですが。やっぱり窪田君がこちらの世界とあちらの世界の境界線に立つから安心できるときもあるし、そうでないときもある(笑)

登場人物。
大日本帝国探偵社の教授&三腐人。このおじさんたちの目的が一番難解だったなあ~(笑)
「ベニスの商人」ごっこをしたり、女性をひどく嫌ったり…いちいち行動が意味不明ww
何を目的にしているのか分からなくて、でも何かの信念を持って行動していて…だからこそ怖くて、私にとっては彼らが一番異形の者でした。
そういう意味では、エリカにご執心の夜の男や桃子&梅子のほうが、自分の欲望のままに突っ走っていて、逆に彼らの方が分かりやすかったなあ。
そう考えると、高田三郎三曹が一番よく分からない人物かも。彼が一番生と死の境目が曖昧でちょっと怖い人物でした。顔色も悪いしねww

風のおじさん&宮沢先生。
織部の保護者だよね?
変なおじさんが多い中(笑)、彼が出てきたときだけはいつもホッとしていました。樫村三空曹として登場したときも、この世界で一番影響を与えられる人物として入ってきたんだと思うんですよね。そして自分の心の中に閉じ籠ってしまった織部を外に連れ戻そうとしている感じ?精神科医として患者(=織部)の心の中に入ってきているイメージです。
宮沢先生は織部の最大の理解者で保護者。彼がいてくれたから私は安心して見ていられたと言っても過言ではありません。それくらい異形の者の世界においては唯一の光でした。

織部とエリカ。
窪田君演じる織部は無垢で純粋で儚い感じ?反面、脆い危うさも秘めている。
エリカが言ってたように気違いか正気か分からない。でもそう言うエリカも実はそうなんだよね。正気と狂気を行ったり来たりしてる。エリカは二面性があるよね。天真爛漫な少年っぽさを見せたと思ったら、艶っぽい女性の姿も顔を覗かせる。エリカは少年女性の二面性と歌、ダンスの魅力をいっぱいに感じさせる、まさに柚希さんに当て書きされたようなキャラだと思います。窪田君もそう。彼のように無邪気であどけない…でも時々取りつかれたように感情を爆発させる人間は窪田君にピッタリだと思います!一方でもっと真逆の…欲にまみれた泥臭い人間も見てみたくなる。泥臭いと言えば、窪田君は汗に涙に血に泥にまみれる役がホント多いですよね!まあ、似合うからなんでしょうけど(笑)

織部はおそらく傷付きやすくて精神病院に入っていたんだと思うんです。そして風の又三郎に誘われるがまま自由を求めて外にやって来た。でも外の世界は守ってくれる高くて頑丈な壁はない。鋭利な刃物で脆い心を愛情や憎悪や嫉妬や悪意で簡単に傷付けられてしまう。それでも元の世界に戻りたいとは思わない。自分は外の素晴らしい世界を知ってしまったから。
2幕の終わりは刺されたエリカを織部が支えたけど、3幕の終わりは刺された織部をエリカが支えてるんだよね。似た者同士の二人はお互いを支え合って生きていくんだろう…。とは言え、ラストシーンは二人が肉体から解き放たれて、魂だけで黄泉の国へ旅立ったようにも見えなくもない。それを茫然と見つめる下界の者(私達…観客)たち…。
ナウシカのラストシーンを思い出しましたww

織部とエリカはこの世に無いものを求めて彷徨っているんだな~と思います。織部は風の又三郎を。エリカはすでにこの世にはいない人を。だから正気と狂気を行ったり来たりするのかも。ラストシーンで二人が乗り込む飛行機も、死の比喩に見えます。だってあれだけ飛行機と死を結びつけて描いてましたからね~。

車イスの織部(窪田君)
怪我をした翌日の公演。マチネで窪田君が車イスに乗っていたと聞いてびっくり。(私はその後のソワレを観ました)
とにかく心配で心配で胸が苦しかった始まる前。始まってからもただただ見守るばかり。その日ほどドキドキしながら見守った公演はなかったかもしれません。でもさすが窪田君、車イスに乗っていても演技はまるで変わらない。車イスの操作だけでも(しかも練習時間もない)大変なのに、あの演技よ…やっぱり窪田君はいつも期待と想像を軽く越えていくね。。。
今回ばかりは、もう最後まで辿り着いたことに泣けて泣けて仕方なかったです。共演者&スタッフ&観客の皆さんも温かくて…その日は色々なことに感動させられました。カーテンコールでは窪田君が泣いていて…その涙を見てさらに泣けた。。。

大千秋楽。
大千秋楽はとにかくみんな全力で笑わせてくれるから、もうめっちゃ楽しかったです!
特に夜の男を演じる北村さん、かなり弾けてました!(笑)
そして風のおじさん(宮沢先生)と織部の絡みも大好きだったなあ~。
大千秋楽では、何だかみんなのアドリブ合戦になってたかもしれませんww

窪田君にエールを送るシーンでは、今まで月9ネタだけだったのに、UNOでも弄ってくれて…ありがたい。
窪田君もお客さんの拍手に対してペコッと頭を下げてたのが可愛かったですね。
そして窪田君にしては珍しく台詞を間違えてた(笑)
「俺の耳隠し返せ!」ってとこを「補聴器返せ!」って間違えてしまって、
やっちまったーと顔を覆ってたのがまた可愛かったなあww

しかし、ラストシーンの飛行機に乗り込むシーン、窪田君の身軽さには度肝を抜かれました。
だって左を支えられてるとは言え、階段を片足で上っていって、最後はヒラッと運転席に入っていくの…まるで背中に羽が生えてるみたい…。
あんなに動きを制限されているのにあの動き…もう凄いとしか言えない。

窪田君の演技力にも、窪田君の精神力にも、窪田君の身体能力にも圧倒された公演でした。
そして彼を支えるチームワークにも。改めてその素晴らしさを肌で感じられたと思います。
最後のカーテンコールでようやく窪田君の言葉が聞けたのも嬉しかったなあ。泣きながら言葉につまりながら、それでも話してくれてありがとう。感謝しかないと言ってくれましたが、私も同じ気持ちです。こんなに素敵な作品を見せて頂いて感謝しかありません。
この作品は記憶に残る作品になる…そう強く思います。

本当に皆様お疲れ様でした!!
またこういう心奪われる舞台を観られますように。。。

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